太陽光パネルはどんな素材でできている?素材別の特徴を解説
東京都で太陽光発電設備の義務化のニュースが報道され、太陽光発電に関心を持つようになった人もいらっしゃるかもしれません。
太陽光パネル(太陽電池)は光エネルギーを電気エネルギーに直接変換できるクリーンな発電方法として注目を集めています。
外観ではどれも同じように見えるかもしれませんが、実は太陽光パネルの素材は、いくつも種類があることをご存知でしょうか?
この記事では、太陽光パネルの素材によってどんな特性があるのか、コストの安さや特徴について解説します。
太陽光パネルは素材によって特性が異なる
太陽光パネルの素材には、さまざまな種類が存在しています。
素材によって太陽光モジュールの変換効率やコスト、特徴が異なるため、各素材の違いを把握することが非常に重要です。
まず各素材の特徴を一覧表にすると以下の通りです。
素材の種類① | 素材の種類② | モジュール変換効率 | コスト | 特徴 |
シリコン系 | 単結晶シリコン | ◎ | 高め | シェアNO.1 |
多結晶シリコン | ◯ | 低め | ||
薄膜系シリコン | △ | 低め | ||
化合物系 | Ⅲ-Ⅴ族多接合 (GaAs等) | ◎ | 高い | |
CIS系 (CIGS) | △ | 低い | 厚みがシリコン系の10分の1程度 | |
有機系 | ペロブスカイト | ◯ | 研究開発中 |
シリコン系太陽電池の特徴
現在販売されている太陽光パネルで最もシェアが高いのがシリコン系太陽電池です。
日本市場の8割、世界市場の9割をシリコン系太陽電池が占めています。
シリコン系の発電効率は一般的に20%前後で、理論上29%が変換効率の限界と言われています。
シリコン系太陽電池の中にもいくつか種類があるため、ご紹介します。
単結晶シリコン太陽電池
最も歴史がある太陽電池で、変換効率が高く、信頼度も高いのが特徴です。
単結晶シリコンインゴット(シリコンの塊)を160〜200マイクロメートルに切って作製します。
耐久力が高いため、家庭用ソーラーパネルに採用されることが多くありますが、高気温の環境下では変換効率が低下してしまうデメリットがあります。
単結晶シリコン太陽電池は、世界でのシェアを拡大していて、85%程度を占めているというデータもあります。
多結晶シリコン太陽電池
細かいシリコン結晶が集まった多結晶シリコンが使用されています。
変換効率は単結晶シリコンに劣りますが、単結晶シリコンよりも省エネルギーな方法で製造できるためコストが低く、大規模な産業用発電設備に採用されることが多くあります。
薄膜系シリコン太陽電池
薄膜系シリコン太陽電池は、低コストで製造できるように、シリコン使用量が少なくて済む太陽電池として開発されました。
厚みが1マイクロメートル程度の極薄のシリコン膜のため、フレキシブルな太陽電池を製造することも可能で、軽量で貼り付けて使用することもできます。
また、多結晶シリコンと比較してコストがかなりおさえられますが、変換効率も低いのが特徴です。
化合物系太陽電池の特徴
化合物系太陽電池はシリコンの代わりに化合物半導体を使用しています。
薄膜で少量の材料で済むためコストが安く抑えられ、課題だった変換効率は向上してきました。
Ⅲ-Ⅴ族多接合型太陽電池
ゲルマニウム基板上にガリウムヒ素などの発電材料を積層して形成され、非常に高い変換効率が得られる一方、コストが高いのが特徴です。
太陽光には紫外線・可視光線・赤外線などさまざまな波長の光があり、材料によって吸収できる波長は限られ、変換効率の限界につながっています。
Ⅲ-Ⅴ族は複数の層で構成されるため、異なる波長の光を吸収して、より多くの光を電気に変換できるため変換効率が高くなっています。
放射線の耐性もあり、宇宙ステーションや人工衛星で利用されています。
CIS(CIGS)系太陽電池
CIS系太陽電池は、銅(Cu)インジウム(In)ガリウム(Ga)セレン(Se)などからなる化合物半導体を使用しています。
結晶シリコンよりも光の吸収率が高く、2〜3マイクロメートルの薄さで光を吸収できるのが特徴です。
製造工程が結晶系シリコンの約半分で済むため、製造コストの削減につながります。
高温環境下でも出力ロスが少なく、パネルの上に部分的な影ができても影響を受けにくいメリットがありますが、シリコン系よりも変換効率が低いというデメリットがあります。
放射線耐性もすぐれているため、宇宙用途にも適しています。
インジウム、ガリウムは希少資源のため、資源確保の安定性にやや不安があります。
日本では、ソーラーフロンティア株式会社がCIS系太陽電池の製造・販売を行っています。
新しいペロブスカイト太陽電池
ペロブスカイト太陽電池は極薄のフィルムに「ペロブスカイト」と呼ばれる結晶の構造をした物質を塗ることで太陽光を電気に変えられる新しい技術で、日本で開発されました。
ペロブスカイト太陽電池に関する最近のニュースとして、2023年6月27日エネコートテクノロジーズとトヨタ自動車が、車載用ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた共同開発を開始したことが発表されています。
実用化が待たれる新しい太陽光パネル素材です。
参考:株式会社エネコートテクノロジーズ|車載用ペロブスカイト太陽電池の共同開発をトヨタと開始〜発電効率が高く、走行時のCO2排出量低減が期待できる次世代太陽電池〜
まとめ
太陽光パネルは、素材によって特徴が異なります。
単結晶シリコンは、世界シェアが高く、狭い面積でも発電量を確保しやすくなっているため住宅用太陽光パネルに採用されることが多くあります。
多結晶シリコンは、単結晶シリコンに比べてコストが下げられるものの、発電効率も低下してしまう特徴があり、産業用太陽光パネルに採用される事例が多いです。
高気温や部分的な影に強いCIS太陽光パネルはコストにも優れ、今後の発展が楽しみな素材です。
市販化されていない太陽光パネル素材もあり、これからはさらに高効率で低コストな素材が開発・市販される可能性があります。
太陽光発電設備を設置する際には、こうしたコストや変換効率、素材の特性を考慮した上で決定していただければ幸いです。