太陽光発電で使う蓄電器の寿命ってどのくらいなの?
太陽光発電を行うには、太陽光を吸収する太陽光パネルと、変換した電気エネルギーを貯めておく蓄電池が必要です。大規模な設備であるため初期コストもかかりますが、消耗品でもあるため寿命も当然ながらあります。この記事では、「蓄電池の寿命」に注目して詳しく解説していきましょう。
太陽光発電における蓄電池の寿命とは
まずは、蓄電池がどのくらい使えるのかを解説していきます。意外と勘違いしている部分もあると思いますので、ここで一緒に理解していきましょう。
法定耐用年数は6年間
「蓄電池 寿命」と検索すると、6年という結果が出てくることがあります。「6年って短すぎない?」と思ってしまいますが、この6年という数字は寿命のことではありません。これは国税庁が定めている法定耐用年数であり、寿命とはまったく関係ない数字なのです。
【法定耐用年数】
法定耐用年数とは、固定資産税(償却資産税)を計算するために設定されている数字です。そのため、基本的に6年以上の寿命があると思って問題ありません。
蓄電池の寿命は「サイクル数」で示す
では、蓄電池の寿命はどのタイミングで迎えるのでしょうか?年数で表すこともありますが、基本的には「サイクル数」で示されることが多いです。
【サイクル数】
蓄電池の放電→充電の1セットを1サイクルとします。ただし、1サイクルとして認められるのは、0%から100%のフル充電し、そこから0%まで放電した状態です。例と挙げて見てみましょう。
0%→100%→0%【〇】
15%→100%→0%【×】
0%→85%→0%【×】
このように、0%と100%の放電と充電を繰り返すことができれば1サイクルとカウントできます。このサイクルが重なっていけばいくほど寿命に近付いていきます。つまり、蓄電池の容量が大きければ大きいほど1サイクルに時間がかかり、寿命も長くなっていくということです。
蓄電池の種類によって寿命も変わる
蓄電池はすべて同じ材質というわけではありません。どの蓄電池を使うかによって、以下のように寿命に差が出てきます。
【蓄電池の酒類別サイクル数】
蓄電池の種類 | サイクル数 | 寿命の目安 |
鉛蓄電池 | 3,150サイクル | 17年 |
リチウムイオン蓄電池 | 3,500サイクル | 6~10年 |
ニッケル水素蓄電池 | 2,000サイクル | 5~7年 |
NAS電池 | 4,500サイクル | 15年 |
参照URL:https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/npu/policy04/pdf/20120705/sanko_shiryo1.pdf
最も寿命が長いのは鉛蓄電池で17年、次いでNAS電池の15年となっています。その一方で、ニッケル水素電池・リチウムイオン蓄電池の寿命は10年未満と非常に短いです。「リチウムイオン蓄電池のサイクル数は鉛蓄電池より長いじゃん!?」と思うかもしれませんが、それだけ1サイクルの消化が早いのです。
寿命を迎えたら交換しよう
もし蓄電池が寿命を迎えたら、そのまま放置せず交換することをおすすめします。もちろん寿命を迎えたとしても使うことはできますが、電池の持ちや効率・経済効果は悪くなっていくでしょう。
10年に1回がおすすめのタイミング
前述した通り、蓄電池の種類によって寿命は変わります。しかし、太陽光発電の蓄電池として使われるのはリチウムイオン蓄電池がメインです。そのため、10年に1回のスパンで交換するのがおすすめと言えるでしょう。バッテリー以外の部品も劣化で寿命を迎えていることが多いです。
それに加えて、10年も経てば同じ型の蓄電池の価格は安くなっている可能性があります。さらに、高性能な蓄電池が販売されている可能性もありますね。より良い発電効率を考えているのであれば、このタイミングで最新のものに交換するのも良いでしょう。
ただし、「絶対に交換しないといけない!」というわけではありません。10年稼働させて十分な収益性があれば無理して交換する必要はありませんし、「もう2~3年はこのまま使っていく」という選択も全然アリだと思います。
長期間保証・長寿命の蓄電池導入の検討
最初は10年くらいの蓄電池を導入し、もし長期的に太陽光発電をしていくと決めたら長寿命の蓄電池と交換するのもおすすめです。メーカーの中には、保証年数15年という蓄電池もあります。このように、交換時に長期稼働を前提とした蓄電池の導入を検討してみましょう。
寿命を延ばすためにできること3選
蓄電池に寿命はありますが、必ず「〇〇年で使えなくなる!」というわけではありません。人間と同じように、しっかりとメンテナンスしてあげれば寿命が延びる可能性もあります。ここでは、蓄電池の寿命を少しでも延ばすためにできることを3つ紹介していきましょう。
- 高温多湿な場所に設置しない
- 過放電、過充電はNG
- メンテナンスは定期的に行う
高温多湿な場所に設置しない
直射日光や熱がこもりやすい場所に蓄電池を設置しないようにしましょう。とくにリチウムイオン蓄電池を利用する場合、高温による劣化が激しくなります。自分が思っている以上にリチウムイオンが消耗されていきますので、平均寿命を待たずして使えなくなる可能性もあるくらいです。
このようなリスクを減らすためにも、蓄電池の設置は業者に依頼する方が良いでしょう。直射日光が当たらない場所、季節問わず熱がこもらない場所を考慮して設置してくれると思います。仮に自分で設置する場合でも、一度は相談するようにしましょう。
過放電、過充電はNG
過放電とは、蓄電池に充電した電気を使い切った状態で放置し続けることです。一見、使わないまま置いておくだけなのでむしろ寿命が延びると感じてしまいますが、実際は急激な電圧降下が起こるため蓄電効果が機能しにくくなります。
逆に、100%の状態なのに充電し続ける過充電もNGです。限界以上に蓄電させようとすると、蓄電池がどんどん劣化していきます。最悪のケースになると、蓄電池内部が高温になって火災などの二次被害が出てしまう危険性まであるのです。
メンテナンスは定期的に行う
蓄電池に破損や故障があれば放置してはいけません。しかし、蓄電池が劣化しているのか、破損や故障しているのかを素人目で確認するのは難しいです。そこでおすすめなのが、業者による定期メンテナンスをお願いすることです。早めに修理できれば修理コストも少ないですし、発電効率の改善にも繋がります。
それに加えて、太陽光パネルの定期メンテナンスも重要です。パネルの劣化を放置すると、蓄電池の劣化に繋がってしまう可能性があります。太陽光パネルは蓄電池以上に外部からの影響を受けやすく、とくに台風の季節などは破損しやすいです。とくに花粉と黄砂は太陽光発電の大敵ですね。
【※豆知識】
そもそも太陽光発電の定期メンテナンスは義務化されている場合があります。もし義務化されているのに無視してしまうと、さまざまな資格が剥奪されてしまう危険性があるため注意しましょう。メンテナンスに関しては「意外と知らない!太陽光発電システムの点検義務について分かりやすく解説【】」で詳しく解説していますので、気になる人はぜひ参考にしてみてください。
まとめ:蓄電池は10年を目途に交換しよう
今回の記事をまとめると以下のようになります。
・蓄電池の法定耐用年数は6年
・実際の寿命は10~15年ほど(※種類で変わる)
・寿命がきても交換しない選択肢もアリ
・寿命を延ばすために工夫しよう
太陽光発電における蓄電池の寿命についてまとめてみました。平均して10~15年ほどが寿命となっていますが、10年に1回くらいの交換スパンがおすすめです。ただし、発電率に納得しているなら交換せずに使い続ける選択肢もアリと言えるでしょう。しっかりとメンテナンスすれば、寿命を延ばせるという点も覚えておくのがおすすめです。