意外と知らない!太陽光発電システムの点検義務について分かりやすく解説
太陽光発電は、太陽光パネルと蓄電池を設置すれば何もしなくても良い…というわけではありません。どちらも消耗品ですので、しっかりとした管理が必要になります。それに加えて、実は点検が義務付けられていることもあるのです。この記事では、そんな太陽光発電における「点検」について分かりやすく解説していきます。
太陽光発電は点検(メンテナンス)が義務なの?
まずは、太陽光発電で使用される太陽光パネルや蓄電池の点検が義務なのか、という点について軽く触れていきましょう。結論から言うと、点検が義務になるケースとならないケースがあります。
点検が義務になるケース
点検が義務となっているのは、以下のようなケースになります。
①50kW以上が搭載されている太陽光発電(電気事業法)
これは昔から義務付けられたものです。安全性を担保するために、電気主技術者によって1年に2回の点検が義務付けられています。
②固定価格買取制度(FIT制度)を利用している太陽光発電(再エネ特措法施行規則)
こちらは、2017年4月1日に行われたFIT制度の改正で決められたものです。家庭用・産業用問わず、火災などのリスクを軽減するために点検を義務付けられました。
点検が義務にならないケース
上記の義務化されているケースと真逆で、「50kW未満+固定価格買取制度を利用していない太陽光発電」は点検の義務化がされていません。つまり…
・全て自家消費の場合
・FIT制度を使わず売電をしない場合
※50kW未満
は点検をする必要がないのです。ただし、資源エネルギー庁が出している事業計画策定ガイドラインには、「点検することが望ましい」と書かれています。点検しないと罰せられることなどはありませんが、火災などのリスクを減らすためにも定期的な点検はした方が良いでしょう。
点検義務を無視したらどうなるの?
もし点検が義務化されている状態で無視した場合、売電の認定が取り消されるなどの処分が課せられる可能性があります。1回目であれば指導や助言に留まることもありますが、2回目からは改善命令になり、それでも改善されない場合は取り消し処分になるでしょう。
太陽光発電の点検を行うことで得られるメリット
「点検は義務!」と言われると命令されているようで嫌だな…という人もいるかもしれません。しかし、点検することで得られるメリットはその気持ちを変えてくれるでしょう。
火災や事故などのリスクを減らせる
最も分かりやすいメリットが、太陽光パネルが破損してしまったり、それによって他の人に被害を与えるリスクを減らせるという点でしょう。太陽光パネルは意外と頑丈ですが、台風などの影響による飛来物で割れてしまう可能性があります。
そのまま放置しておくと火災になってしまうかもしれませんし、破片が飛んで人を傷付けてしまう可能性もあるのです。被害が大きいと損害賠償請求にまで発展する可能性もあるでしょう。定期的に点検することによって、このようなリスクを事前に解消することができるのです。
発電量を安定させることができる
太陽光発電の発電量・効率というのは、使えば使うほど減っていきます。消耗品なので仕方ないことなのですが、定期的に点検することで安定・維持させることは可能です。例えば、太陽光パネルに付着した汚れを落とすだけでも太陽光の吸収率は上がるでしょう。
汚れが溜まっていくと発電量も下がりますし、故障や火災の原因になってしまうこともあります。パネルの点検も大事ですが、太陽光を邪魔する草木の手入れもついでに行えますよね。このように、安定した発電量を確保するために点検は必要なのです。
問題を早期発見・対策ができる
「パネルは割れていないし、汚れもないから安全だ!」と思うかもしれませんが、他にも確認すべきポイントは沢山あります。例えば、パネルを固定しているボルトが緩んでいるのを発見できただけでも、大きな事故を防げるのです。修理・交換・賠償請求などのリスクを考えたら、少し面倒でも点検しておくべきだと分かったと思います。
どのくらいの頻度で点検すべき?
太陽光発電の場合、最低でも4年に1回は点検する必要があります。例外として、設置後1年目も点検が義務化されているので覚えておきましょう。それぞれ、点検内容は以下のようになっています。
【点検の目安】
点検の目安年数 | 点検目的 |
導入1年目 | 初期不良の発見 |
導入5年目 | 劣化・破損状況の確認 |
導入9年目以降 | 劣化・破損状況やメーカー保証期間の確認、消耗部品の交換 |
導入20年目以降 | 劣化・破損状況の確認や設備の交換時の検討 |
上記の点検内容は基本的なものであり、発電量が多い場合は2回以上の点検が必要というケースもあります。その他にも、点検員の常駐が義務化されるケースもありますので、設置する際にはしっかりと確認しなくてはいけません。
点検内容は非常に細かい
「事業計画策定ガイドライン」に具体的な点検方法は記載されていません。しかし、「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」には、点検方法の記載がされています。1つ1つ細かく解説すると長くなりますので、ここでは軽く触れていく形にしましょう。
太陽光パネル自体の点検:破損やホットスポットの確認・設備の清掃・固定されているかの確認
パワーコンディショナーの点検:目視による汚れ、異音、悪臭、フィルター詰まりの確認・劣化による交換
配線や接続部などの点検:損傷や劣化の確認、交換
絶縁抵抗値の点検:電流が規定数値以上に通電していないかの確認
発電量の点検:パネルが性能に合った発電をしているかの確認
接地抵抗(アース)の点検:接地に異常がないかの確認
太陽光発電の点検義務を果たすためのポイント
最後に、太陽光発電の点検義務を果たすために抑えるべきポイントを解説します。
- 専門の点検業者に依頼する
- 点検報告書などの書類は保管する
- メーカー保証の範囲内か確認する
専門の点検業者に依頼する
太陽光発電の点検箇所は非常に細かく、個人でやり切るのは難しいのが現状です。屋根に太陽光パネルを設置している場合、高所での作業になるため落下事故の恐れもあります。そのため、専門の点検業者に依頼することを検討してみましょう。
【点検業者の選び方】
・点検内容が充実しているか
・適切な作業費を請求してきているか
・追加費用などの心配はないか
・しっかりとした資格を保有しているか
・口コミなどの評判はどうなのか
など…
太陽光発電の点検業者は複数ありますが、1社目で即決するのはおすすめできません。できるだけ複数の業者で比較し、自分の太陽光発電に合っている業者を選ぶのです。資格の確認としては、以下のような資格を持っているか確認してみましょう。
太陽光発電メンテナンス技士:一般社団法人太陽光発電安全保安協会(JPMA)が発行
PV施工技術者:一般社団法人太陽光発電協会(JPEA)が発行
点検報告書などの書類は保管する
業者による点検が終わったら、報告書などの書類はすべて大切に保管しておきましょう。点検後に何かトラブルが起こった際に、書類があるのとないのとでは大きな差があります。報告書があれば「ちゃんと業者に依頼して点検しました!」という証拠にもなりますよね。
メーカー保証の範囲内か確認する
もし点検が終わって交換した方が良い部品が見つかった場合、まずはメーカーに連絡・相談することをおすすめします。基本的に10~15年ほどメーカー保証が付いており、故障内容によっては無償で交換できる可能性があるからです。
まとめ:基本的に点検は義務だと思っておこう
今回の記事をまとめると以下のようになります。
・太陽光発電は点検が義務化されていることが多い
・定期的な点検にはメリットがいっぱいある
・4年に1回の周期で点検時期が訪れる
・個人での点検は厳しいため業者を利用する
太陽光発電の点検が義務化されていないケースもありますが、基本的には義務化されていると思って行動するのがおすすめです。もし義務化されていないケースでも、定期的に点検した方がメリットも多いためおすすめしたいです。汚れを落とすことや周りの草木を排除するなど個人でできることもありますが、大規模な点検は業者を利用するようにしましょう。