電気代に上乗せされる再エネ賦課金とは?減らす方法はあるの?
近年では、再エネ賦課金という言葉を耳にすることも増えてきたと思います。
よく知らないという人も多いでしょうが、再エネ賦課金はほとんど国民に関係する問題です。
具体的には、再エネ賦課金は電気を使うすべての国民に毎月の電気代に上乗せされて請求されています。この記事では、再エネ賦課金はなんのために徴収されているのか、その目的と金額の推移、今後の動向について解説します。
再エネ賦課金とは
再エネ賦課金は、正式には「再生可能エネルギー発電促進賦課金」といいます。
再エネ賦課金は、再生可能エネルギー普及のために電気を使う国民全てに支払いの義務がある賦課金です。
再生可能エネルギーとは、太陽光、風力、水力、地熱などの資源として尽きる事の無い、再生可能なエネルギーのことをいいます。これらのエネルギーを用いた発電は、環境にもやさしいことで知られています。
私たちは皆、これらの再生可能エネルギーの普及のため、毎月電力会社を通して国に決まった額の再エネ賦課金を支払っています。
覚えがないという人は、電力会社の電気料金検針票を確認してみてください。
再エネ賦課金という名前で、毎月一定額の支払いが行われているはずです。
再エネ賦課金の目的
再エネ賦課金は、一時期には全体の電気料金の10%を超える額にまで達したことがあります。それによって再エネ賦課金に対して不満を覚える人も増えたのではないでしょうか。
再エネ賦課金は、2012年7月よりFIT制度が始まったことにより、再エネ賦課金として徴収が始まりました。
FIT制度とは、再生可能エネルギーで発電した電気の買取価格を、一定以上の固定価格で電力会社が買い取ることを保証する制度で、この制度のおかげで、国民の再生可能エネルギー発電設備の導入のハードルが低くなっています。
国民から徴収した再エネ賦課金は、FIT制度を通して、再生可能エネルギーの発電設備所有者への支援金として用いられているのです。
なぜそうまでして再生可能エネルギーを国が普及させたいのかというと、大きな目的として
「環境問題への配慮」と「国内のエネルギー自給率の引き上げ」が設定されています。
これら二つの目的がどのような意味合いで設定されているのか詳しく解説します。
「環境問題への配慮」
日本では発電の7割が「火力発電」によって行われています。
火力発電は発電の過程で大量のCO2を排出することが大きな問題となっており、世界的な環境問題となっている「地球温暖化」の大きな原因となっています。
また、火力発電に使われる石油や石炭、天然ガスは限りある資源であり、このまま使い続けると数十年後には枯渇するといわれています。
太陽光発電などの再生可能エネルギーは環境にやさしく、資源が枯渇する心配がないため、世界的にも普及に向けて大きな動きが望まれています。日本もそれに応じて再生可能エネルギー普及のために、FIT制度の制定や再エネ賦課金の徴収を行っているのです。
「国内のエネルギー自給率の引き上げ」
日本は海外諸国と比べても、エネルギー自給率が低い国です。
以前は20%ほどあったエネルギー自給率も、東日本大震災で起きた原発事故により、原子力発電反対の動きが高まり、2019年には12.1%にまで落ち込んでいます。
日本では火力発電の燃料にできる資源が乏しいことから、エネルギー資源のほとんどを海外からの輸入に頼っています。そうなると国際情勢の影響を大きく受けることになり、電気代は変動しやすく、安定しないという問題が起こっています。
国内のエネルギー自給率を高めることは、日本では長らく重要な課題とされてきました。
その解決方法の一つとして、国内の再生可能エネルギーの普及が望まれているのです。
国はできるだけ多くの人に再生可能エネルギーの発電設備を導入してもらい、エネルギー自給率を引き上げたいという狙いがあります。これらの理由から再生可能エネルギー普及のために再エネ賦課金の徴収は行われています。
再エネ賦課金の計算式と金額の推移
再エネ賦課金の金額は、毎年経済産業省大臣が再生可能エネルギーの買取価格や普及の動向などを見て決定しています。
再エネ賦課金の徴収は、電気の使用者が使用する電気量に比例して高くなる仕組みになっており、その単価は年々上昇しています。
再エネ賦課金の計算式は、電気の使用量に単価を掛けた金額です。
2022年時点の単価に平均的な家庭の月の電気使用量を掛けて計算すると、
単価 (3.45円)×平均的な家庭の月の電気使用量(300kWh)=1035円 となり、
電気料金に加えて月に1035円もの支払いを行っていたことが分かります。
再エネ賦課金の単価と月の支払金額の推移を表にまとめたので、確認してみて下さい。
年度 | 単価(1/kWh) | 月の支払い額(300kWh) |
2012年 | 0.22円 | 66円 |
2013年 | 0.35円 | 105円 |
2014年 | 0.75円 | 225円 |
2015年 | 1.58円 | 474円 |
2016年 | 2.25円 | 675円 |
2017年 | 2.64円 | 792円 |
2018年 | 2.90円 | 870円 |
2019年 | 2.95円 | 885円 |
2020年 | 2.98円 | 894円 |
2021年 | 3.36円 | 1008円 |
2022年 | 3.45円 | 1035円 |
2023年 | 1.40円 | 420円 |
表を見れば分かるように、2012年には66円だった月の支払額は、2022年には1035円にまで上昇しています。
ひとつ気になる点として、2023年の単価が1.40円と大きく下がっていることがありますが、これは世界的な問題となっているロシアのウクライナ侵攻が大きく関係しています。
戦争の影響で電気の買取価格が上昇し、再生可能エネルギーの電気も高く売れるようになったことから、単価の低下が起こりました。しかしこれは一時的なものであり、今後も再生可能エネルギーの普及が進んでいくことから、再び単価は上昇していくことが予想されています。
再エネ賦課金の支払いを減らせるのか
再エネ賦課金は、日本の未来を考える上で必要な賦課金であると言えますが、その支払額は年々増加傾向にあり、国民の大きな負担となっているのも事実です。
再エネ賦課金を払わない、もしくは減らす方法はないのかと考える人もいると思いますが、再エネ賦課金は電気を使う人に平等に、必ず徴収される賦課金なので、再エネ賦課金を減らす方法は残念ながらありません。
再エネ賦課金を減らしたいのであれば、再生可能エネルギー設備の導入を行うしかありません。太陽光発電設備などを自宅に導入し、発電した電気を自家消費すれば電力会社から電気を買う量を大きく減らせるので、結果的に再エネ賦課金も大きく減らすことができます。
近年では太陽光発電設備導入の初期費用の負担を無くすために、オンサイトPPAモデルの導入を行う人も増えています。
オンサイトPPAモデルとは、自宅(自社)の敷地をPPA事業者に貸し出し、太陽光発電設備の設置と管理を行ってもらうというものです。発電した電気はPPA事業者のものになりますが、導入の初期費用はかからず、発電した電気を通常よりも低価格で買うことができます。
さらに、オンサイトPPAで購入した電気には、再エネ賦課金がかかりません。オンサイトPPAを導入すれば、実質的に再エネ賦課金を0円にすることができます。
再エネ賦課金を減らすには、再生エネルギーを普及させる側になることが、最も効果のある方法となるでしょう。
まとめ
再エネ賦課金は電気を使うすべての国民に支払いの義務があり、その金額は年々上昇していることから、国民の生活の負担となっています。
しかし、再エネ賦課金には、再生可能エネルギーの普及という重要な役割があります。
環境問題への配慮や、エネルギー自給率の引き上げなど、再生可能エネルギーの普及には大きな役割があり、これから先も再生可能エネルギーの普及は進んでいくことでしょう。
再エネ賦課金を減らしたいのであれば、再生可能エネルギーの普及に貢献することが、一番の方法です。これまで関心を持っていなかった人も、一度再生可能エネルギーの普及について考えてみてはいかがでしょうか。