太陽光パネルは減価償却できる?個人や中古の場合も解説
太陽光発電設備を導入した際には、減価償却できるのか知りたい方も多いと思います。
減価償却と密接に関係する法定耐用年数と実際の寿命の違い、2種類ある減価償却方法の違いと選び方、中古で太陽光発電設備を購入した場合まで解説します。
太陽光発電は減価償却ができる
太陽光発電で発電した電力を売電して利益を得ている事業者は、設備の減価償却が可能です。
経費として計上できるため、節税につながります。
個人宅の住宅用太陽光発電設備について
個人の住宅用太陽光発電設備で減価償却の対象資産となるケースは多くありません。
- 屋根一体型の太陽光パネルが採用されている場合
- 事業所を兼ねる住宅に太陽光発電設備が設置されている場合
個人宅で主に自家消費用途で太陽光発電を行っている場合、売電収入から経費を差し引いた所得が20万円を超える場合には確定申告の必要があります。
住宅用発電設備は出力が10kW未満で発電量は多くないため、発電した電気の大半は自家消費されることになります。
そのため個人宅で売電所得が20万円を超える可能性はとても低いでしょう。
しかし、その他の副収入などがあり、合計所得が20万円を超える場合には確定申告が必要となり、減価償却ができます。
太陽光発電の法定耐用年数
減価償却にかかせない法定耐用年数について解説します。
売電を目的とした太陽光発電の法定耐用年数は17年
法定耐用年数とは、減価償却資産を会計処理できる年数を意味します。
売電を目的とした太陽光発電設備の法定耐用年数は17年です。
企業が自社で消費する太陽光発電の法定耐用年数は業種により変わる
太陽光発電設備で発電した電力を自社で使用する場合には、導入する事業所や工場の生産品によって変わります。
例えば自動車製造業の企業が、自社工場内に自動車製造設備を稼働させる目的で太陽光発電設備を導入する場合、太陽光発電設備の法定耐用年数は9年となります。
太陽光発電設備の寿命は20年〜30年
ここまで法定耐用年数について解説しましたが、一般的に設備の寿命を指す「耐用年数」とは意味が異なるため注意が必要です。
太陽光発電の耐用年数(寿命)は20〜30年と言われていますが、さらに長く使用できる可能性があります。
各ソーラーパネルメーカーは20年〜25年の出力保証をつけている場合が多くあります。
実際に、過去の実例を見てみると30年以上稼働している事例が見つかります。
1983年奈良県の壷阪寺に設置された太陽電池、1984年に設置された「佐倉ソーラーエネルギーセンター」の太陽電池は40年近く経過した現在も稼働している貴重な実例です。
減価償却は2種類の計算方法から選択
減価償却を会計処理する際には、定額法と定率法という2種類の計算方法があります。
それぞれ解説します。
計算方法①定額法
毎年、一定額を減価償却していく方法です。
計算式がシンプルで、毎年の減価償却費が同じ額でわかりやすいのが特徴です。
計算式は以下の通りです。
取得価額×定額法の償却率0.059
例えば1000万円の太陽光発電を導入したと仮定すると、
1000万×0.059=590,000円が減価償却費です。
計算方法②定率法
毎年、一定の割合で算出した額を減価償却していきます。
償却額が一定割合で毎年減っていく方法で、初年度が最も償却額が大きく、年々減少していきます。
2年目以降は、購入費用から前年度に計上した減価償却費を引き、定率法償却率0.118を掛けます。
計算式は、以下の通りです。
未償却残高(購入年度は取得価額)×定率法償却率0.118
例えば1000万円の太陽光発電を導入したと仮定すると、
1000万×0.118 = 1,180,000円が減価償却費です。
定率法の償却保証額
定率法は償却が進むと、途中のある額から強制的に定額法に変更されます。
定率法は前半では減価償却額が高額ですが、年数が経過するほど少額になっていき、減価償却に時間がかかりすぎてしまいかねません。
そこで、最低限の金額として「償却補償額」が設定されています。
償却保証額は、購入額×保証率4.038%です。
1,000万円の太陽光発電設備だと仮定すると、403,800円を切ったところで定額法に切り替わり、毎年403,800円が減価償却費として計上されます。
償却方法は3年間変更できない
どちらの方式でも減価償却額は変わりませんが、前半で多く計上して後半の負担を少なくするか、毎年一定の金額を計上するかの違いになります。
定額法、定率法いずれかを選択すると、3年間は償却方法の変更ができないため、慎重に決定しましょう。
もし3年が経過してから償却方法を変更する場合には、管轄する税務署で手続きを行います。
太陽光発電の減価償却のメリット
太陽光発電の減価償却には、以下のメリットがあります。
所得税や法人税の節税
太陽光発電設備は、17年もの間、減価償却資産として費用計上できるため、帳簿の利益を抑えることにつながります。
その結果、所得税や法人税を抑えられることになります。
なお、太陽光発電の購入費用だけでなく、点検・修理といった保守費用も経費として計上可能です。
損益を正確に把握できるようになる
法定耐用年数に応じて減価償却費を何年にも分けて経費計上することで、設備投資にかかった費用と、それから得られる利益を正確に把握しやすくなります。
例えば、初年度に設備投資金額を全額経費計上してしまうと、2年目以降は投資金額がよくわからないまま利益だけが表面化してしまうでしょう。
減価償却によって、実態に即した正確な損益が見えるようになります。
太陽光発電設備の中古購入に関して
太陽光発電は、中古品を購入しても、減価償却できます。
ただし、新品で購入した場合の耐用年数とは異なるため注意が必要です。
中古の太陽光発電設備を購入した場合の、本体の耐用年数の計算方法は以下の通りです。
(17年-経過年数)+(経過年数×20%)
経過年数5年の太陽光発電設備の場合
例として、経過年数5年の中古の太陽光発電設備の耐用年数の計算方法は以下の通りです。
(17年-5年)+(5年×20%)=13年が耐用年数となります。
経過年数20年の太陽光発電設備の場合
経過年数が20年の場合、法定耐用年数である17年を超えています。
法定耐用年数の全部を経過した資産は、その法定耐用年数の20%相当の年数が耐用年数となります。
太陽光発電設備の法定耐用年数は17年のため、以下の計算式となります。
17×20%=3.4年
1年未満の端数は切り捨てのため、耐用年数は3年です。
まとめ
主に事業用に太陽光発電設備を導入する場合には、導入した設備の費用を減価償却することができます。
太陽光発電設備を減価償却できる期間は法定耐用年数と呼ばれ、17年間です。
しかし、実際の太陽光パネルの寿命は20年以上と言われています。
減価償却方法は定額法と定率法の2種類があり、初年度に経費を多く計上したい場合には定率法、毎年一定額を計上する場合には定額法を選択しましょう。
中古品の場合には、経過年数によって法定耐用年数がかわるため注意しましょう。