太陽光パネルに求められる雪対策とは?積雪地域特有の注意点も解説
積雪地域では、太陽光発電設備を設置する上でどういった注意が必要なのでしょうか。
雪の降る地域でも太陽光発電は可能ですが、降雪地域特有の注意事項があります。
積雪地域で求められる雪対策や積雪地域に太陽光発電設備を設置するメリット・デメリットまで解説します。
求められる雪対策
積雪地域で太陽光発電設備を設置する際に求められる注意点を8つ解説します。
①住宅屋根上の太陽光発電は落雪に注意
太陽光パネル表面は滑らかなガラスで覆われているため、とても滑りやすくなっています。
そのため、太陽光パネルに積もった雪が滑り落ちる速度が速くなりやすいです。
そのため、通常の落雪よりも大きな衝撃を与えたり、予想以上に遠くまで落雪する可能性があります。
実際に隣家の壁や植木、カーポートの屋根、自動車、給湯器、テラスの屋根を破損させたり、子供がけがをするといった被害が起きています。
トラブルに発展しかねないため、十分な注意が必要です。
②落雪による被害を防ぐために
さきほど太陽光パネルは雪が高速で滑り落ちる危険性について解説しました。
太陽光パネルの落雪による被害を防ぐためには、雪止めなどの落雪防止設備が必要となります。
屋根いっぱいに太陽光パネルを設置すると、雪止めを設置するスペースがなくなります。ぎりぎりまで屋根いっぱいにパネルを設置したい場合、軒先に雪止め金具を設置する方法もあるため、業者とよく打ち合わせをして決めましょう。
③雪に強い製品を選択する
雪に強い太陽光発電設備を選択することが重要です。
雪が積もってしまった場合、太陽光パネルには膨大な荷重がかかります。
そのため、十分な耐雪荷重性能を持っている製品を選択しなければなりません。
例えば以下の製品は、太陽光パネルのガラスとアルミフレームの段差をなくし、雪が積もりにくい設計になっています。
さらに200cmもの積雪荷重に耐えられる仕様になっているのも大きな特長です。
参考:SHARP|産業用太陽光発電システム|高効率多結晶太陽電池モジュール<ND-250SE>
④積雪地域で施工実績が豊富な業者に依頼する
一言に雪といっても、地域によって降雪量や雪質などが地域によって異なります。
施工実績が豊富な業者や雪害対策に詳しい業者に相談すると、地域に応じた適切な設置方法を選ぶ手助けになるはずです。
⑤太陽光パネルの雪下ろしは基本的にNG
太陽光パネルの雪下ろしは、基本的に以下の2つの理由により、行うことができません。
- 太陽光パネルの表面が滑りやすく落下の危険性が高い
- 太陽光パネルに損傷を与えるおそれがある
どうしても雪下ろしが必要になった場合には、システムメーカーや専門業者に相談しましょう。
しかし、そもそも冬は太陽の位置が低く、発電量が低下します。
お金や手間をかけてパネル上の雪を取り除いたとしても、発電できる電力は限られてしまいます。
参考:太陽光発電協会|太陽電池パネルからの落雪事故防止について
⑥野立ての場合には傾斜15度以上
平地などに太陽光パネルを設置する野立ての場合、太陽光パネルの傾斜角は最低でも15度、30度前後ついていると雪が滑り落ちやすくなります。
傾斜角は発電効率にも影響するため、積雪の防止と良好な発電効率が両立できる適切な角度に設定することが求められます。
⑦壁面に設置する場合には70度もの角度をつける事例も
豪雪地帯の壁面に太陽光パネルを設置する場合、70度もの角度をつけて取り付ける事例があります。
この傾斜だと大雪の環境下でも太陽光パネルに雪が積もらず、太陽光発電を続けることができるようです。
参考:TBS|「実は夏より冬の方が発電するんです…」信州の豪雪地帯から「太陽光発電」新事実!なぜ?キーワードは「雪やけ」 長野・飯山市
⑧太陽光パネルの高さを100cm以上確保
積雪地域では、太陽光パネルを設置する高さにも注意が必要です。
野立ての場合には、太陽光パネルが雪で埋もれてしまわないよう、パネルの高さを100cm以上確保することが推奨されています。
積雪地域で太陽光発電を導入するメリット
雪が降る環境は、太陽光発電にとってマイナスにしか働かないわけではありません。
積雪地域で太陽光発電を導入するメリットを解説します。
気温上昇による発電量低下を抑えられる可能性
雪の降る地域で、夏季でも気温があまり高くならずに済む場合、気温上昇による発電効率の低下を防げます。
強烈な日差しが指す真夏は、太陽光パネルの発電効率も上昇すると考える人も多いかもしれません。
実は太陽光パネルの発電効率が最も優れるのは気温25度前後ですので、それよりも気温が高くなってしまうと発電効率が低下してしまいます。
そのため、高い気温になりにくい降雪地域は、効率よく発電できる環境でもあります。
雪面反射による発電量増加
雪の上で日差しを浴びると「雪焼け」によってあっという間に顔が真っ赤に焼けてしまいます。
同様に、太陽光パネル周辺が雪で覆われると、雪面反射によって空からの日差しだけでなく、雪からの反射によって発電量が高まる可能性があります。
実際、先ほどご紹介した長野県飯山市の事例では、夏よりも雪が積もった3月4月が最も発電量が多くなっています。
台風の被害を抑えられる可能性
台風や突風は、太陽光発電設備にとって重大な脅威です。
パネルや関連設備が飛ばされてしまったり、飛ばされてきた物で太陽光パネルが損傷するといった事例が発生しています。
積雪地域は北海道や東北、北陸地域が中心です。
こうした地域に台風が直撃する頻度は他の地域に比べて低く、上陸したとしても勢力が弱まっていることが考えられます。
参考資料:太陽光発電協会|太陽電池パネルからの落雪事故防止について
積雪地域で太陽光発電を導入するデメリット
積雪地域で太陽光発電を導入するメリットは、以下の3つです。
- 雪で発電量が減少もしくはゼロになるリスク
- 積雪の重さによる太陽光発電設備破損のリスク
- 落雪事故のリスク
それぞれ解説します。
雪で発電量が減少するリスク
太陽光発電は、くもりの日でも、晴れの日の3分の1から10分の1、雨の日では5分の1から20分の1程度の電力を発電します。
太陽光パネルが雪でおおわれてしまった場合にも、やはり発電量が減少してしまいます。
一時的な話ですが、分厚い雪で完全に覆われてしまった場合には、ほとんど発電できない場合もあります。
積雪の重さによる太陽光発電設備破損のリスク
雪が大量に積もってしまうと、ものすごい重さになります。
そのため太陽光パネルだけでなく、架台など発電設備すべてが変形したり、破損してしまうリスクがあります。
太陽光発電設備への積雪は、発電効率が低下するリスクだけではなく、破損した場合には莫大な修理費がかかってしまうといった事態も起こりえます。
実際、令和3年豪雪では傾斜角30度でパネルの最低部が1m以上で設置されていたにもかかわらず、短時間の急激な積雪によってパネル外れ、パネルや架台の変形、基礎の沈下などさまざまな被害が発生しました。
参考:メガソーラービジネス|「令和3年豪雪」が太陽光発電所に残した”爪痕”、雪解けで明らかに
落雪事故のリスク
太陽光パネルはガラスでおおわれているため、一般的な屋根に比べて雪が高速で滑り落ちやすくなっています。
そのため太陽光パネルからの落雪によって予想以上の衝撃が発生し、給湯器や自動車、植木などが破損してしまったり、人にあたって怪我をしてしまう事例が発生しています。
まとめ
積雪地域で太陽光発電設備を設置するには、雪の対策が不可欠です。
太陽光パネルの上に雪が積もりすぎてしまうと、雪の重さで破損してしまいかねません。
太陽光パネルが家屋の上に設置されている場合には、落雪事故を起こさない対策が必須となります。
しかし、積雪地域では気温が低く、積もった雪に太陽光が反射するため発電効率が上昇する要因にもなりえます。
降雪地域の太陽光発電設備に関する相談は、雪害対策の知識を持ち、施工実績が豊富な業者に依頼するのがよいでしょう。